yuhaku
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2016.09.05

世界一の手染めレザーブランド「yuhaku」ができるまで
vol.02:手染め

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絵画のように何色もの色を重ねて染め上げる

 

仲垣氏が長年にわたって行ってきた絵画制作の技術をもとに、研究を重ねて完成させたのが「yuhaku」の手染め技術。革を染めながら、色を重ねていくこの技法は世界でも類を見ない独自のものだ。すべて職人の手作業で行われるこの技法は、思い通りの仕上がりにするために多くの経験と優れた美的感覚が必要不可欠。そのため「yuhaku」の職人の多くが美大などでアートの勉強をしてきた経験をもっているという。アーティスティックな感性と、それを活かせる技術、経験が重なりあってはじめて美しく仕上がる革の芸術が「yuhaku」の製品なのである。

 

僕達はアートをつくるような気持ちで製品作りに臨んでいます

 

型入れをしてパーツを切り出した後、本格的な染めの工程が始まる。「yuhaku」の場合には少なくとも4色、多いものだと8色の染料を使用し手染めを経て商品になっていくという。使用するのは色落ちを考慮して水に溶けにくい性質をもったアルコール性の染料。第一層と同じく手を丸く動かしながら少しずつ染めていく。1色、2色と染め進んでいく度に革は次第に深みのある色へと変化。グラデーションもより明確になっていく。「こうやってひとつずつ手作業で染めていくので職人の感性が重要になります。僕達はアートをつくるような気持ちで製品作りに臨んでいます」と仲垣氏。こうして染められた「yuhaku」の革は二つとして同じものが無い特別な存在なのだ

 

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同じ青系統でも十数種類の染料を使い分け、理想の色を追求しています

 

染料は色々なメーカーのものを試し、現在は国内外のメーカー数社の染料を使用している。ただし、そのまま使うことは稀。理想的な色に仕上げるためには、同系色でも様々な濃淡、明暗のある染料が必要不可欠。そのためメーカーに開発を依頼したものや独自のレシピをもとに調合したものを使用しているという。「同じ青系統でも十数種類の染料を使い分け、理想の色を追求しています。1色を染め上げるのに4~8色の色を重ねるため、5色展開の商品では30色近く使うこともありますよ」と、ことも無げに言う仲垣氏。普通のメーカーではとても真似出来ない気が遠くなるほどのプロセスを当たり前に進めるこのスタンスに「yuhaku」の染めの本懐があるように感じた。

また、使っているうちに色が深みを増していくのも「yuhaku」の製品がもつ特徴。これも顔料やワックスを載せるのではなく、革を染めているために起こる現象のひとつ。ベースとなるベジタブルタンニン鞣しの革が濃い色へと変色するため、それにともなって見た目も深い色に変わっていくのだ。使い込むほどに自分だけの色になる、革製品本来の楽しみが味わえる。

 

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2016.08.21

世界一の手染めレザーブランド「yuhaku」ができるまで
vol.01: 革の品質管理

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何色もの染料を使い、手染めで美しいグラデーションを作り出す「yuhaku」のレザー。このブランドのモノづくりは、世界でも唯一と言われる独創的な染色手法と細部にまで行き届いたこだわりに支えられている。今回我々がその魅力の一端をお伝えすべく伺ったのは、革の選定から始まり、染色、磨き、縫製へと続く重要な工程を担っている横浜の自社工房。多くの有能な職人たちが今日も革と真摯に向き合い、より高いレベルのモノづくりに挑むこの場所は、さながらアーティストたちが集うアトリエのようなクリエイティビティに満ちていた

 

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ミリ単位の傷も見逃さない徹底した革の品質管理

 

ベースとなる革のクオリティは製品の完成度や質感にも関わる重要項目。そのため「yuhaku」ではイタリアを中心に世界各国のタンナーから最高レベルの革を調達している。代表の仲垣氏いわく「追い求めているのは、しなやかでありながらコシもある、相反する特性を合わせ持つ革。海外の革の展示会などにも出かけて理想の革を探していますが、両方を兼ね備えた革はなかなか見つかりません」とのこと。また原皮の段階での品質管理も他社とはまったく異なるレベルの厳しい基準を設けているという。“良い革の中でも、さらに良い部分だけを使う” 当たり前のことのように感じがちだが、効率優先のモノづくりが蔓延している今の世の中では、この“当たり前”を額面通り実践しているブランドは数少ない。世界一の手染めレザーブランドとしての高い理想が「yuhaku」の徹底した品質管理につながっているのだ

 

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丸く円を柄がくように手を動かしていくのだが、手を止めてしまうとその部分だけ色が濃く入ってしまう

 

「yuhaku」のモノづくりは革を徹底的にチェックすることから始まる。半裁(牛の半分の大きさ)の革に第一層目の染めを施し、ヌメのままでは見つけにくい傷や斑を目立たせ、その後に細かく確認していく。「この第一層目の染めは、傷を見やすくするだけでなく、その後の染めにも大きく関わる重要な工程です。ここで何色を、どの濃さで入れるかによって、製品の透明感や発色が変わってくるんです。例えば、赤く染める場合、第一層にはあえて黄色を入れます。これは日本の着物を染めるプロセスにも似ています」。また染め方自体にも高い技術力が必要だ。丸く円を柄がくように手を動かしていくのだが、手を止めてしまうとその部分だけ色が濃く入ってしまう。できるだけスムーズに手のひらに神経を集中させて行う必要があるのだ。

 

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ルーペを使って見ることもあるほど、傷のチェックには細心の注意をはらっている

 

傷がある部分はもちろんのこと、小さな斑があるところも製品には使えない。たとえ初期の製造工程では目立たなくても、染めて、磨いて、仕上げていくにしたがって目立つようになってくるのだ。革の状態によっては表面にはさほど表れていなくても、裏面の状態が悪いこともあるので気は抜けない。細かな傷に関しては、ルーペを使って見ることもあるほど、傷のチェックには細心の注意をはらっている。

 

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手作業で、ここまで細かくこの作業をしているのは、ビックメゾンもしくはオーダー店のみと言えるだろう

 

写真のような僅かな傷も見逃さずチェックし、それらの傷を避けて良い部分だけに銀ペンでマーキングしていく。手作業で、ここまで細かくこの作業をしているのはハイブランドもしくはオーダー店のみと言えるだろう。半裁からとれるのは長財布わずか17本分程。顔料で色をつけた革であれば表面の傷がある程度隠れてくれるので、当然もっと多の財布が作れるが「yuhaku」のように手染めする場合はそうはいかない。革が無駄にならないように、またクオリテイの低い部分を取らないように気を配りながら作業が続く。

 

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