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2016.08.21

世界一の手染めレザーブランド「yuhaku」ができるまで
vol.01: 革の品質管理

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何色もの染料を使い、手染めで美しいグラデーションを作り出す「yuhaku」のレザー。このブランドのモノづくりは、世界でも唯一と言われる独創的な染色手法と細部にまで行き届いたこだわりに支えられている。今回我々がその魅力の一端をお伝えすべく伺ったのは、革の選定から始まり、染色、磨き、縫製へと続く重要な工程を担っている横浜の自社工房。多くの有能な職人たちが今日も革と真摯に向き合い、より高いレベルのモノづくりに挑むこの場所は、さながらアーティストたちが集うアトリエのようなクリエイティビティに満ちていた

 

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ミリ単位の傷も見逃さない徹底した革の品質管理

 

ベースとなる革のクオリティは製品の完成度や質感にも関わる重要項目。そのため「yuhaku」ではイタリアを中心に世界各国のタンナーから最高レベルの革を調達している。代表の仲垣氏いわく「追い求めているのは、しなやかでありながらコシもある、相反する特性を合わせ持つ革。海外の革の展示会などにも出かけて理想の革を探していますが、両方を兼ね備えた革はなかなか見つかりません」とのこと。また原皮の段階での品質管理も他社とはまったく異なるレベルの厳しい基準を設けているという。“良い革の中でも、さらに良い部分だけを使う” 当たり前のことのように感じがちだが、効率優先のモノづくりが蔓延している今の世の中では、この“当たり前”を額面通り実践しているブランドは数少ない。世界一の手染めレザーブランドとしての高い理想が「yuhaku」の徹底した品質管理につながっているのだ

 

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丸く円を柄がくように手を動かしていくのだが、手を止めてしまうとその部分だけ色が濃く入ってしまう

 

「yuhaku」のモノづくりは革を徹底的にチェックすることから始まる。半裁(牛の半分の大きさ)の革に第一層目の染めを施し、ヌメのままでは見つけにくい傷や斑を目立たせ、その後に細かく確認していく。「この第一層目の染めは、傷を見やすくするだけでなく、その後の染めにも大きく関わる重要な工程です。ここで何色を、どの濃さで入れるかによって、製品の透明感や発色が変わってくるんです。例えば、赤く染める場合、第一層にはあえて黄色を入れます。これは日本の着物を染めるプロセスにも似ています」。また染め方自体にも高い技術力が必要だ。丸く円を柄がくように手を動かしていくのだが、手を止めてしまうとその部分だけ色が濃く入ってしまう。できるだけスムーズに手のひらに神経を集中させて行う必要があるのだ。

 

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ルーペを使って見ることもあるほど、傷のチェックには細心の注意をはらっている

 

傷がある部分はもちろんのこと、小さな斑があるところも製品には使えない。たとえ初期の製造工程では目立たなくても、染めて、磨いて、仕上げていくにしたがって目立つようになってくるのだ。革の状態によっては表面にはさほど表れていなくても、裏面の状態が悪いこともあるので気は抜けない。細かな傷に関しては、ルーペを使って見ることもあるほど、傷のチェックには細心の注意をはらっている。

 

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手作業で、ここまで細かくこの作業をしているのは、ビックメゾンもしくはオーダー店のみと言えるだろう

 

写真のような僅かな傷も見逃さずチェックし、それらの傷を避けて良い部分だけに銀ペンでマーキングしていく。手作業で、ここまで細かくこの作業をしているのはハイブランドもしくはオーダー店のみと言えるだろう。半裁からとれるのは長財布わずか17本分程。顔料で色をつけた革であれば表面の傷がある程度隠れてくれるので、当然もっと多の財布が作れるが「yuhaku」のように手染めする場合はそうはいかない。革が無駄にならないように、またクオリテイの低い部分を取らないように気を配りながら作業が続く。

 

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