yuhaku
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2016.10.03

世界一の手染めレザーブランド「yuhaku」ができるまで
vol.04: 商品開発

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手染めを引き立てるデザインと使用感の追求

 

手染めによる独特なグラデーションだけではなく、使いやすさでも評価の高い「yuhaku」。今回は商品開発について紹介していこうと思う。そもそも大手の革小物ブランドでは、それほど頻繁に財布やカードケースなどのデザインを変更しないのが常識。いくつかの定番デザインをもち、それを色変更、革変更することでラインナップに厚みを持たせているケースがほとんどだ。そんな業界にあって「yuhaku」はやはり希有な存在と言えるだろう。繰り返しになるが「yuhaku」の最大の特徴は、何層にも手染めを重ねたグラデーション。ともすると有機的に見えるこの革を引き立てるために、デザインは逆に直線基調の都会的なものになるよう心がけているという。「yuhaku」の製品が個性的でありながら、ビジネスシーンでも嫌味なく使えるのはこのバランス感覚あってのこと。もちろんお札や小銭のみならずカード類の出し入れのしやしすさまで徹底検証して製品化されている。デザインでは1mm単位、革の厚みに関しては0.1mm単位にまでこだわって商品を開発しているのだ。

 

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財布の中身はもちろん、ポケットからの出し入れなど、
一連の動線を確認し、基本設計の不備やより良い使用感を探ります

 

「財布などの設計に際してはスケッチなどはあまり書きません。頭の中にあるものを一気に図面に起こすことが多いです」。ただし使い勝手に関する検証はかなり念入りだ。新しいスタイルを開発をする時には写真のような紙製のサンプルを作って、動線の確認を怠らない。「これは僕自身が建築を学んでいた影響もあると思いますが、こうして紙製のサンプルを作り、財布の中身はもちろん、ポケットからの出し入れなど、一連の動線を確認し、基本設計の不備やより良い使用感を探ります」と仲垣氏。実際に革のサンプルを作る段階にくると、それぞれの革の厚みや重なり方、ステッチの入り方などまで、より細かく検証。ほんのわずかな厚みや重なり方が高級感や品格に影響を与えるという。

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デザインに合わせてミシンの押さえを削り出すなど、道具ひとつひとつにも深い探求心が貫かれている

 

「yuhaku」のモノづくりは革を徹底的にチェックすることから始まる。半裁(牛の半分の大きさ)の革に第一層目の染めを施し、ヌメのままでは見つけにくい傷や斑を目立たせ、その後に細かく確認していく。「この第一層目の染めは、傷を見やすくするだけでなく、その後の染めにも大きく関わる重要な工程です。ここで何色を、どの濃さで入れるかによって、製品の透明感や発色が変わってくるんです。例えば、赤く染める場合、第一層にはあえて黄色を入れます。これは日本の着物を染めるプロセスにも似ています」。また染め方自体にも高い技術力が必要だ。丸く円を描くように手を動かしていくのだが、手を止めてしまうとその部分だけ色が濃く入ってしまう。できるだけスムーズに手のひらに神経を集中させて行う必要があるのだ。

 

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このハンマーで最終的に製品を仕上げるのですから、これぐらい磨いて当然だと思っていました

 

それほど種類は多くないが革もしっかり用意されている。これはカラーオーダーや突然の修理に対応するためのもの。一部はサンプル用にも使われるという。工具類の写真は「yuhaku」の前身となった、ビスポーク専門の革工房「アメノスパッツィオ」時代に使っていたハンマーや革包丁。革包丁は日本刀の鍛冶職人の手によるもの。ハンマーのヘッド部分は顔が映るぐらいまでピカピカに磨き上げられている。「このハンマーで最終的に製品を仕上げるのですから、これぐらい磨いて当然だと思っていました。でも意外に革職人の方でここまで道具にこだわる人は少ないんですよね」と独立前の修行時代を振り返る仲垣氏。そういった細かなこだわりが積み重さなり、大きな差になっていく。「yuhaku」がモノにこだわる大人たちに支持される理由の一端が見えた気がした。