yuhaku
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2017.06.09

「yuhaku」のルーツでもある手染めの革靴

 

革靴をキャンバスに見立て絵画のように色を重ねる

 

今でこそ革小物のイメージが強い「yuhaku」だがブランドのルーツは革靴にある。「yuhaku」を牽引する仲垣氏は無類の靴好きで、一時は100足以上もコレクションしていたほど。イタリア人の靴職人の教えを請い、自分でもオールハンドで1足靴がつくれるほどの技術を習得しているとか。それだけに「yuhaku」にとって革靴は特別な存在なのだ。今回は実際にヌメ革で作った靴に色を入れ、染料を重ねることで深みを増していく「yuhaku」の手染めの醍醐味をレポートしたい。

 

 

ベースとなる革靴はイタリアのカーフを使って素上げしてもらったもの。モデルによってグッドイヤーウェルトとマッケイの2タイプの製靴方法がとられるが、今回染めるブローグシューズはグッドイヤーウェルトでつくられたものだ。染料はブルーを基本にグレー、茶色、黄色など数種類を使って手染めしていく。

 

 

 

最初は靴全体をブルー(空色)に染めていく。この時に完全に乾いてしまう前にバフを掛けるのがポイント。染料が完全に乾いてから磨いても思うような光沢が出ず、革も堅くなってしまう。それ故に1足ずつ染めていく必要があり、大量生産はできないのだ。とにかく手早く的確にタイミングを見ながらバフを掛け、手染めを繰り返していく。まさに革との対話を繰り返していくような作業で、すべて職人の感覚によるところが大きい。これも長い経験の中で試行錯誤しながら見つけ出してきた「yuhaku」だけの技術だ。

 

 

ヌメ革の時には分かりにくかった肌の細かな状態も下地の空色を塗ると見つけやすくなる。この段階でスリッカーと呼ばれる工具で凹みキズなどをしっかりとならして綺麗にしておく。こうしておくことで仕上がりに差が出てくるのだ。

 

 

 

 

下地の段階から完成を予想してグラデーションをつけていく。タンの部分も細めのハケを使って手染めし、丹念にバフを掛けていく。

 

 

 

下地の手染めが終わると、次は靴の外周を黒い色に手染めしていく工程だ。ハケだけではなく布も効果的に使い、下地との境界線をボカしていく。

 

 

通常、革靴をグラデーションにする場合はトゥとヒールをダークトーンにするのがセオリー。だが「yuhaku」では逆に靴の中央部分に暗い色を持ってくる。

 

 

革の切り換えの部分やコバにもハケを使って手染めしていく。

 

 

 

左がハケを使う前のもので右が細部まで手染めしたもの。ちょっとしたことだが見た目がかなり変わってくることが分かるはずだ。

 

 

 

次に使うのは黄色の染料。靴の上で下地の青と混ぜることでグリーンのような色へと変化していくため、それほど黄色が強調されることはない。

 

 

黄色をはじめとした明るい色は、靴に光が射し込むイメージで染めていくのだとか。まさしく靴をキャンバスに見立て、油絵のような感覚で色を重ねて完成へと近づけていく。アーティスティックな感性をもつ「yuhaku」の職人たちの腕の見せ所だ。

 

 

 

今回の手染めの中でも一際スピーディーさが要求されるのがブラウンの染料を使う工程。茶系の染料は他の色を打ち消してしまいやすいので、それを防ぐために素早く手染めして、バフを掛けていく。

 

 

向かって右がブラウンを手染めしてバフを掛けたもの。より深みが出たのがお分かりいただけるだろうか。

 

 

 

 

アッパー部分の仕上げに筆を使ってき履き口などのコバも仕上げていく。この時、ブラックではなくグレーの染料を使うのがポイント。黒だとコントラストがきつく出過ぎるため、敢えてグレーを使っているのだという。右が仕上げ前、左が仕上げ後になる。

 

 

 

 

革靴好きの方ならご理解いただけると思うが、良い革靴は底までしっかりと仕上げられているもの。「yuhaku」はアウトソールにも手染めで色を入れていく。中央の膨らみを中心として、ゆるやかにグラデーションがかかったこの靴底はまるでバイオリンのような風情。この立体感を演出するため、シャンクの他に形成した革を入れ、敢えて靴底の中央が盛り上がるように設計しているという。無類の靴好きである仲垣氏ならではの造型美だ。

 

 

今回手染めしたのはブルーグリーンというカラー。ベースの革の色が経年変化で黄色くなっていくため、履いているうちにさらにグリーンが強くなっていく。「yuhaku」の職人たちは染め上がりのイメージを持つだけでなく、完成してから経年変化をすることまで考慮して手染めを施していく。染料や革の特性をよく理解しているからこそできる仕事なのだ。

 

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2017.05.12

芸術性を突き詰めたコードヴァン製品の手染め

 

研ぎ澄まされた職人の感覚が「yuhaku」のグラデーションを創りだす。

 

基本的にヌメ革から手染めで色を入れていくのが「yuhaku」の流儀。だがコードヴァンを使ったシリーズだけは既に製品になったものに手染めでグラデーションを加えている。これはコードヴァンの染色方法が普通の革とは異なるため。「yuhaku」では世界的なコードヴァン専門の皮革工房であるレーデルオガワと協力し染め色にこだわった独自の皮革を使用している。製品染めの場合、手染めとバフ掛けがほぼ最後の工程になるため、この段階でのミスは許されない。それだけに職人たちは独特の緊張感の中でグラデーションを描いていくことになる。

 

 

 

 

これが染めを施す前の名刺ケース。自然な艶があるレーデルオガワの水染めコードヴァンを使っているため、この段階でも既にモノとして魅力的だ。手染めの染料は、明度の異なる4種類のグレーが用意される。天然故にベースの革の発色が一つ一つ異なるため、この4種類の中から使うものを見きわめて手染めしていく。

 

 

 

染料を手染め用の布に少量とりフリーハンドでグラデーションを描いていく。まずは薄グレーを使ってぼやけている境界線部分から染め始め、外側の濃いグレーの部分へと染めを進めていく。綺麗なグラデーションになるか否かはまさに職人の感覚によるところ。また、少しでも強く圧を掛けて染めてしまうと色が入らないところができてしまうため、力加減にも細心の注意が払われる。

 

 

 

 

内側までコードヴァンを使った贅沢な仕上げなので、当然内側にも手染めでグラデーションを描いていく。外側と内側のグラデーションのポジションやぼかし具合が揃うように、調整を行いながら進めていく。コードヴァン以外の内装パーツを汚さないように気をつけなくてはいけないのも製品染めの難しさのひとつ。柔らかな白い布を敷いているのは表面に傷がつくのを防ぐための配慮だ。

 

 

ステッチの外側の細かな凹凸のある部分は綿棒を使って染めていく。通常の生地で染めていくだけではこの部分だけ染まらずにベースの色が残ってしまう。こうした細部にまで気を配っていくことが「yuhaku」ならではの完成度の高さにつながっている。

 

 

バフを掛けて磨き上げていく商品化直前の工程。少量のワックスをつけて磨くことでコードヴァンならではの光沢感を出しつつ、この素材の弱点である耐水性も高めることができる。艶が出ることで「yuhaku」の最大の特徴である手染めのグラデーションがより一層際立って見えてくる。最高峰のコードヴァンと芸術性の高い手染めが完璧に融合した瞬間だ。

 

この手間ひまかけた手染めのコードヴァンの商品はこちら >

 

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2016.12.23

長く使っていただくための正しいメンテナンス
vol.02: 引っ掻き傷編

 

毎日使っていると避けられないのが爪や金具などによる引っ掻き傷。コーティングを施していない「yuhaku」の革なら、これぐらいの傷はすぐに修復可能だ。「yuhaku」が質感を生かした革を利用する理由のひとつが、ここにある。写真で白く見える傷の部分は、革が剥がれてしまっているわけではなく、表面が荒れてギザギザになっている状態。これを平らに戻し、クリームで油分を補っていくことで傷が消えてしまうというわけだ。

 

 

まず始めにクリームを着けずに乾いた柔らかい布(着古したTシャツなどでOK)で傷の部分を磨き、ある程度傷をフラットに戻しておく。この工程を経ずにクリームを使うと、傷の部分にだけクリームが入ってしまい、かえって傷を目立たせてしまうことになる。

 

 

 

傷を消す時のコツは爪を上手に使って、革の表面を平らにしてあげること。写真のようにウエスの中で人差し指を鍵状に曲げ、爪の表側をつかって磨くようにすると上手に力を入れることができる。この時、人差し指に親指を押し当てるのがポイントだ。より力を加えて磨くことができる。数回磨くごとに革の状態をチェックしながら時間をかけて行うと失敗が少ない。

 

 

クリームを塗る時のポイントは量を少なめにすること。一度にたくさん着けすぎるとシミになってしまったり、染料が落ちてしまう原因になる。「yuhaku」が推奨しているコロンブスのブリオを使う場合でも、指先に少し乗る程度が適量と言えるだろう。ちょうど米粒大が目安だ。ウエスに取って、薄く、広く伸ばしていく感覚で行ってもらいたい。

 

 

適量のクリームをウエスに取り、傷の部分をゆっくりと磨いていく。ある程度の力をかける必要があるが、水ジミ同様、強く磨き過ぎると染料が落ちてしまうことがあるので、力加減には注意が必要だ。最初は優しく、次第に力をかけながら調整していくようにしたい。適度な力で磨いていくと次第に傷は消えていく。

 

 

先程の傷が嘘のように無くなったのがお分かりいただけるだろう。この状態になるまでわずか5分程。少し手をかけるだけで、見違えるように綺麗になるのが革製品の面白いところだ。大切な人に会うその時にメンテナンスをするだけで、飛躍的に製品の寿命を延ばすことができる。

 

 

右:コロンブス ブリオ
革のメンテナンス初心者でも失敗が少ないオススメのクリームがこちら。革への浸透力はそれほど強くないが、保革成分のホホバオイルと天然ワックスのビーズワックスがしっかり含まれているため光沢が出やすく、扱いやすい。

 

左:レザーマスター レザープロテクションクリーム
イタリアから上陸したクリームで、浸透力が強く4日間ほどかけて革の内部まで浸透。革に栄養分を与え、耐水性、耐油性も高め内側から革を守ってくれる。浸透力が高い反面、使い方を誤ると染料を浮き立たせてしまうため、色落ちが起きる危険性もある。そのため、初心者の方はコロンブス ブリオでメンテナンスに慣れ、次のレベルでレザープロテクションクリームを使うのがオススメだ。

 

各商品ごとのお薦めケア用品はこちらをご覧ください。 >

 

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2016.12.16

長く使っていただくための正しいメンテナンス
vol.01: 水ジミ編

 

革製品を長持ちさせるためには日頃の手入れが必要不可欠。特に「yuhaku」のアイテムは顔料やラッカーなどでコーティングをせず、革の質感を生かした手染め仕上げになっているため、メンテナンスがより一層重要になってくる。ユーザーの方からもお問い合わせの多い、正しいメンテナンス方法について、ここで紹介していこう。

 

水は禁物! もし濡れたら、すぐに水気をとって乾かそう

 

「yuhaku」の製品に限らず、革製品の一番の大敵はやはり水分。雨に濡れたり、水滴が付いたりしたことで、シミになってしまった経験がある方も多いのではないだろうか。これは、革の表面が水分によって一時的にふやけることで、その部分だけ盛り上がった状態になることが原因。特に「yuhaku」の製品は圧力を掛けて磨き上げているため、その現象が目立ちやすい。しかし、正しくメンテナンスをして、フラットに戻してあげることである程度元に戻すことができる。

 

 

どんなに気をつけて使っていても、ふとした瞬間に水滴がついてしまうことはよくある話。こんな時は慌てずに水分を取り除くことを最優先したい。柔らかい布やティッシュで水分を吸い取るイメージで行うのがベスト。擦るように拭いてしまうと、濡れた部分のシミが目立ってしまい被害を広げてしまう可能性があるのだ。

 

 

 

もう既に水のシミが出来てしまった場合は、布にクリームをつけて磨いていこう。この時に注意したいのはクリームの選び方。「yuhaku」の手染め製品に限っては市販のデリケートクリームのように水分が多く含まれているものは避けて選びたい。水分が多いものは使用する量を間違えるとシミになってしまうこともあるので要注意だ。

※「yuhaku」が推奨するクリームは別項目にて紹介。

 

 

 

シミになってしまうと軽く磨いただけでは、なかなか綺麗に修復できない。ある程度力を入れて磨く必要があるのだが、あまり力を入れすぎると染料が落ちてしまう可能性もあので、力加減を調整しながら、少しずつ力を加えていくようにしていきたい。写真のように爪の表側を布に当てて磨くようにするとスムーズに行え、力加減も調整しやすい。さらに、親指を人差し指に押し当てることで、さらに力を加えて磨くことができる。また、指の腹で磨く場合と異なり痛くなりにくい。ぜひ参考にしてほしい。

 

少しずつクリームを付けて様子を見ながら磨いていく。すると次第にシミが薄くなっていき、最終的には画像のようにほぼ元通りの状態になる。シミが薄くなってきたらシミ部分だけではなく、全体を磨くことで痕がより目立たなくなり、製品の寿命も延ばすことができる。

 

 

右:コロンブス ブリオ
革のメンテナンス初心者でも失敗が少ないオススメのクリームがこちら。革への浸透力はそれほど強くないが、保革成分のホホバオイルと天然ワックスのビーズワックスがしっかり含まれているため光沢が出やすく、扱いやすい。

左:レザーマスター レザープロテクションクリーム
イタリアから上陸したクリームで、浸透力が強く4日間ほどかけて革の内部まで浸透。革に栄養分を与え、耐水性、耐油性も高め内側から革を守ってくれる。浸透力が高い反面、使い方を誤ると染料を浮き立たせてしまうため、色落ちが起きる危険性もある。そのため、初心者の方はコロンブス ブリオでメンテナンスに慣れ、次のレベルでレザープロテクションクリームを使うのがオススメだ。

 

各商品ごとのお薦めケア用品はこちらをご覧ください。 >

 

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2016.12.09

他ブランドに「作りたくない」と
思わせるほど設計に心を砕いた渾身の作

 

「yuhaku」×レーデル オガワのコードヴァンを贅沢に使用

 

「これまでに培ってきたノウハウを注ぎ込んだ最高傑作です」。デザイナー 仲垣友博がそう言って憚らないのがデュ モンド シリーズだ。コードヴァンに手染めで芸術的なグラデーションを描いた、モノとしての存在感はラインナップの中でも際立っている。今回はこのシリーズの細部にまで貫かれたこだわりを紹介していこうと思う。

 

 

 

 

デュモンドシリーズに使われるのは「yuhaku」がレーデル オガワと共同開発したアニリン染めのコードヴァン。世界でも比肩する存在がいないとされるレーデルオガワ独自の染色技術と「yuhaku」の染色技法が融合したこのコードヴァンは、間違いなく今考え得る最高品質の革素材だろう。そこに「yuhaku」ならではの手染めが芸術的なグラデーションを持たせ、このシリーズの深い表情を作り上げている。アニリン染めと「yuhaku」の手染めによって生まれる独特な経年変化は、使い込むほどに透明感を増していくような、奇跡の風合いを見せる。

 

 

内装に使われたのはすべて牛革。見えないポケットの裏側までリアルレザーを使うため、通常の財布の2.5倍もの革を使用。当然ここにも「yuhaku」の手染めが生かされている。使用していても見えないカードケースや冊入れの内側まで革を使うこだわりの深さは、「yuhaku」のモノづくりに対する姿勢が映し出されている。「糸とコバ以外は全て革です」と言う仲垣氏の言葉に一切嘘は無い。

 

 

もうひとつ、この財布を作るにあたり仲垣氏が何よりも心を砕いたことがある。それが“設計”だ。特にカードスリットに関しては、その深さや形状も、吟味してデザインされている。得てして多種多様なデザインのカードをスリットに収納すると、必要以上に生活感が出てしまう。それを避けるためにカードが見えにくい深めのスリット採用。取り出しやすさにも配慮し、独特な形状のカッティングを施している。「yuhaku」らしく、実際にカードを収納して、財布を開いた時の美しさをとことん追求したというわけだ。また各パーツ類が重なる部分に関してはコンマ数ミリ単位で革を漉き、菱針で縫製。最大で7~8枚重なるカードスリットの縫い合わせ部分でも驚くほどスッキリとした仕上がりになっている。「yuhaku」のモノづくりを知っている方にとっては、別段驚くポイントでもないかもしれないが、カットした場所すべてがコバ処理されているのも特筆すべきポイントだろう。この財布に関して仲垣氏は「他の業者やメーカーが“作りたくない”と思うほど手の込んだものを目指した」とのこと。実際に手にしてみると、その言葉がある種の迫力を持って迫ってくる。

 

 

カラーに関しては全部で4種類。このカラーバリエーションもベースとなるコードバンから「yuhaku」が監修して作り上げたものだ。特にワインに関してはレーデル オガワと試行錯誤を重ねて完成した特別なカラーといえる。「yuhaku」のモノづくりの粋を集めた傑作をぜひ手にとってお楽しみいただきたい。

 

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