yuhaku
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2016.09.19

世界一の手染めレザーブランド「yuhaku」ができるまで
vol.03: 磨き

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艶のある美しい表情がグラデーションを引き立てる

 

手染めと並んで仕上がりの印象を大きく左右するのが磨きの工程。「yuhaku」では、バフ掛けやグレージングなどといった磨き・艶出しの工程に多くの時間を割いている。豊かな質感や触感、艶感と、手染めによる美しいグラデーションが響き合うことで「yuhaku」の革が完成する。

 

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艶のある美しい表情を作り出すのに、必要不可欠な機械として探し出した

 

手染めが終わった後はグレージングの工程へと移っていく。通常、グレージングは革の表面の繊維を圧力によってつぶし、滑らかで光沢のある革に仕上げるためのもの。しかし「yuhaku」の場合は、光沢を得るのと同時にイタリア製の保護クリーム及び、英国製の撥水クリームを革に浸透させ、色止めの効果を得ることにも成功している。アルコール系染料を使う「yuhaku」の場合、手染め工程で若干ではあるが革の油分が失われ、革が硬化してしまうケースがある。その僅かな硬化もここで革に必要な栄養分を補うことで、解決している。じつは、このグレージングを行う機械自体もかなり希少で、コードバンまたはエキゾチックレザーを扱うタンナー以外ではなかなか見ることができないものだが、艶のある美しい表情を作り出すのに、必要不可欠な機械として探し出したようだ。扱い方も決して簡単ではない。「ちょっとした力加減が艶に影響を与えてしまう繊細な作業。満足できる仕上がりになるまで試行錯誤を重ねました」と仲垣氏。こういった一工程ごとの精度の積み重ねが製品の大きな差になってくるという。

 

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ほんの数秒バフに当てては色目を確認し、またバフに当てる。
たったひとつのパーツにこの作業を何度も繰り返していく

 

染め上がった革は熟練の職人によって丁寧にバフ掛けをされていく。磨きながらワックスを使ってグラデーションを整えていくため、この工程もとても重要だ。ほんの数秒バフに当てては色目を確認し、またバフに当てる。たったひとつのパーツにこの作業を何度も繰り返していく。正直、我々の目には単調に移る作業だが、「yuhaku」の職人達には、その永遠とも思える作業の先にある理想的な革のグラデーションが見えているのだろう。「色に関しては突き詰めれば正解が無い世界。それだけに最後の詰めの部分は信頼している職人の感覚にゆだねています」。仲垣氏が生み出した「yuhaku」の理念、そして「yuhaku」の色を受け継ぐ職人たちのスピリッツが工房に溢れていた。

 

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中には傷とは呼べないような微細なものも、スリッカーという木製の道具で整えていく

 

革の調達や傷の確認、染めやグレージング、バフ掛けが終わると製品化への準備も最終段階へ。ここで更に念入りに行われるのが検
品作業だ。各段階でも完璧を期してすすめてきた作業だけに最終段階で検品するのはごく細かな傷やケバ立ちなど。中には傷とは呼べないような微細なものも含まれている。担当する職人が真剣な面持ちで傷を探し、ひとつずつ丁寧にスリッカーという木製の道具で整えていく。実際問題、製品になってからでは細かな修正もより難しくなる。どんな些細なことでもここで直しておくことが全体のクオリティアップにも寄与しているのだ。正直、他社でここまで品質にこだわっているところはほとんど無いだろう。「創業当初こそ、僕が厳しく見て、職人に直してもらっていたんですが今では逆ですね。職人のほうがクオリティに厳しいぐらいです」と仲垣氏を顔をほころばす。仲垣氏のスピリッツは職人たちにしっかりと受け継がれ、「yuhaku」のクオリティをより高いレベルに引き上げているのだと感じた。

 

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2016.09.05

世界一の手染めレザーブランド「yuhaku」ができるまで
vol.02:手染め

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絵画のように何色もの色を重ねて染め上げる

 

仲垣氏が長年にわたって行ってきた絵画制作の技術をもとに、研究を重ねて完成させたのが「yuhaku」の手染め技術。革を染めながら、色を重ねていくこの技法は世界でも類を見ない独自のものだ。すべて職人の手作業で行われるこの技法は、思い通りの仕上がりにするために多くの経験と優れた美的感覚が必要不可欠。そのため「yuhaku」の職人の多くが美大などでアートの勉強をしてきた経験をもっているという。アーティスティックな感性と、それを活かせる技術、経験が重なりあってはじめて美しく仕上がる革の芸術が「yuhaku」の製品なのである。

 

僕達はアートをつくるような気持ちで製品作りに臨んでいます

 

型入れをしてパーツを切り出した後、本格的な染めの工程が始まる。「yuhaku」の場合には少なくとも4色、多いものだと8色の染料を使用し手染めを経て商品になっていくという。使用するのは色落ちを考慮して水に溶けにくい性質をもったアルコール性の染料。第一層と同じく手を丸く動かしながら少しずつ染めていく。1色、2色と染め進んでいく度に革は次第に深みのある色へと変化。グラデーションもより明確になっていく。「こうやってひとつずつ手作業で染めていくので職人の感性が重要になります。僕達はアートをつくるような気持ちで製品作りに臨んでいます」と仲垣氏。こうして染められた「yuhaku」の革は二つとして同じものが無い特別な存在なのだ

 

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同じ青系統でも十数種類の染料を使い分け、理想の色を追求しています

 

染料は色々なメーカーのものを試し、現在は国内外のメーカー数社の染料を使用している。ただし、そのまま使うことは稀。理想的な色に仕上げるためには、同系色でも様々な濃淡、明暗のある染料が必要不可欠。そのためメーカーに開発を依頼したものや独自のレシピをもとに調合したものを使用しているという。「同じ青系統でも十数種類の染料を使い分け、理想の色を追求しています。1色を染め上げるのに4~8色の色を重ねるため、5色展開の商品では30色近く使うこともありますよ」と、ことも無げに言う仲垣氏。普通のメーカーではとても真似出来ない気が遠くなるほどのプロセスを当たり前に進めるこのスタンスに「yuhaku」の染めの本懐があるように感じた。

また、使っているうちに色が深みを増していくのも「yuhaku」の製品がもつ特徴。これも顔料やワックスを載せるのではなく、革を染めているために起こる現象のひとつ。ベースとなるベジタブルタンニン鞣しの革が濃い色へと変色するため、それにともなって見た目も深い色に変わっていくのだ。使い込むほどに自分だけの色になる、革製品本来の楽しみが味わえる。